自己責任のセカイ
準備運動も終わり、いよいよ国旗掲揚、そしてブリーフィングが始まりました。
競技長はニックさんで、みんなに説明していました。「今日の競技長は私、ニックが…」って言ってたから、競技長は持ち回りでやっているのではないかと思われます。
自分のスクワッドは当然ながら、イチローさんと一緒。そしてイチローさんの弟子で、この日の競技長であるニックさんとも一緒でした。
初めのステージはSHOW DOWN。左右2つのボックスから3回/2回ずつ撃つやつです(JSCだと2回/2回)
自分が初めて実銃のシューティングマッチを撃つ、それどころか実銃は、イチローさんのもとで3日間、練習しただけというのは、イチローさんがみんなに説明してくれていたので、自分はスクワッドの撃ち順も最後です。
いよいよ自分の番になったとき、ニックさんがイチローさんに「ROをやりますか?」と聞いていたんですが、イチローさんは「ワシがROをやると練習と変わらないから、ニックがバットンのROをやってくれ」と言いました。
ネクストシューターで自分の名前が呼ばれ(呼ばれるまでボックスに入ってはなりません)、ボックス左側の台にTUFF レンジバッグを置き、イチローさんからお借りした、P226 X-Fiveを取り出しました。
P226 X-Five:競技向けの5.0インチモデル。IPSCの規定に適合する。一部モデルを除きシングルアクション・オンリーでアンビセフティを備え、コック&ロックが可能。他にもアジャスタブルサイト、改良型リコイルスプリング、ビーバーテイル、ハイグリップ加工などを備える。そのためP226とのパーツ互換性はほとんど無くなっている。 SIG社のカスタム部門"マスターショップ"が製作するモデルも存在する。(Wikiより)
そして、自分がお借りしたのは「P226 X-Five Tactical:アンダーマウントレール、固定式サイト、ブラック・カラーなど実戦を意識したモデル。9mmモデルのみで装弾数は15発」でした。
ちょっとJSCと違ったのは、JSCでは「サイトチェックどうぞ」とROの声掛けの後にサイトチェックをし、そのあとに「ロードアンドメイクレディ」と言われてからマガジンを差してロードしますが、アメリカでは「ロードアンドメイクレディ」と言われた後に、サイトチェックし、そして自分がいいと思ったところでロードという順番でした。
そして、運命の一発目、ショーダウンですから、左一番奥のラクタングルターゲットが自分の初弾。ターゲットまで25ヤード(約23m)ありますが、ラクタングルはでかいので、ちゃんと狙えば大丈夫…
ブザー音、初弾ラクタングル外し… 2発目ラクタングルヒット、 3発目プレート外し… 4発目プレートヒット …とヒドイありさまで、しかも4発目を撃ち終わった後、スライドが戻りません
なんと、ここでジャム! ちらっとエジェクションポートを覗いたらダブルフィードしてます。3日間の練習で1回もなかったことが、本番のファーストストリングでおきました。
いままでの自分がやってきた海外ツーリング、海外ラリー、会社経営、etc... それこそ積み重ねた人生経験で、分かっていることがあります、不測の事態が起きたとき一番危険なのは、慌ててなんとかしようともがいてしまうことです。
だから、ターゲットに銃を向けたまま、トリガーから指を外し、顔だけ横に向けてイチローさんを探し、「ジャムです!」って助けを求めました。自分が出来ないことは分かっているので無理はしません。素直に出来る人にお願いします。
イチローさんは静かに、「マガジンを抜いて銃を渡しなさい」と言ってくれて(このときは日本語で言ってくれました。マリポサピストルクラブでは、イチローさんは自分に話しかけるとき、他の人に分かるよう、基本的に英語を使っていました)、自分は指示に従い、事なきを得ました。
それはガントラブルでMAX30秒を取られることもなく、最初のストリングからやりなおし。自分は落ち着いて、ゆっくり狙って撃つことが出来ました。自分のタイムは、「4″83 /
撃ち終えてガンをレンジバッグにしまい(レースホルスターを使っている人は、ガンドロップの危険があるので、ボックスから出る前に、ガンを必ずガンバッグに戻さなければなりません)ボックスを出たら、マリポサシューテイングクラブのみなさんが自分の人生初シューティングを見ていてくれて、みんなから拍手をいただき、握手も求められました。イチローさんの3日間の特訓のおかげで、自分は無事に撃つことが出来ました。
知らぬ間に自分の後ろに集まっていた多くのメンバーからの拍手をいただき、ホッとすると同時に厳しさも知りました。マリポサピストルクラブのメンバーは、みんな、自分をチェックしに最初の射撃を見に来ていたんです。
いくら、イチローさんの紹介だとはいえ、たった3日練習しただけで実銃のシューティングマッチに出るヤツをみんな信用してはいません。だから、自分の目で、コイツが大丈夫かどうか、確かめに来ていたんです。自分はみんなのチェックに合格できて、拍手をいただけたのです。シューティングが上手いとか、下手でもがんばっているとかではなく、「仲間として承認する」という拍手でしたので、それはもう、とっても嬉しかったです (≧∇≦)
ここら辺にも日本とアメリカの違いを強く感じました。日本なら、まず「3日練習しただけの初心者に実銃の試合なんて無理だ! そんな前例はない!」で断られるでしょう。もしくは「許可を受けてから3か月以上、並びに5000発以上練習し、○○のテストマッチで○○秒以内の成績を出したら参加可能」とか規定が作られたりするでしょう。
でも、アメリカでは初心者のチャレンジをむげに断りはしません。挑むことを認めてくれるのです。例え初心者であっても、外国人であっても、やる前から「ダメだ!」と否定することも、「きっと出来ない」と決めつけることもなく、チャンスは平等に与えてくれます。
ただし、ダメならすぐ追い返されるのは当然であり、それを判断するのは「イチローさんが紹介したから大丈夫」なのではなく、それぞれが自分の目で見てコイツが大丈夫かどうか各自が判断しているのです。
自己責任とはなにをやってもいいのではなく、責任はすべて自分にあるということであり、これまでこうだったからとか、世間一般ではこうだからとか、誰かがこう言ったからとか、他人の判断に任せることはしないで、自分で考えて判断するということです。自己責任のセカイは、逆に厳しい、シビアなセカイでもあります。
イチローさんがしてくれるのは、自分をここに導いてくれることまで、そこからあとは自己責任。自分でみなさんに認めていただくように努力するしかないのです。
ボックスに入ってからのシューティングだけでなく、レンジの準備を手伝うとき、セーフティエリアで弾を込めているとき、紹介されて挨拶するときの会話、立ち振る舞い、すべて見られているわけであり、ルール・レギュレーションだけでは判断できない部分、仲間にしていいのかどうかの人柄を見られているのです。そんなことはルール化、明文化出来ないことであり、ガンハンドリングだけの話でもありません。
だから、イチローさんは、ガンハンドリングだけでなく、いろんなことをひっくるめて、実銃シューティングマッチに出るときの『お作法』と呼んでいるのだと思います。
…とはいえ、イチローさんはバットンをここに連れてきた責任として、「あとは自己責任だ!」と弟子を放り出すことはせず、常に自分を見守ってくれていて、ジャムのときもすぐに来てくれましたし、とても優しく助けていただきました <(_ _*)> アリガトォゴザイマス
…まだ、1ステージ撃ち終わったところまでの記述ですが、自分が第零次イチローハウスツアー、そして、初の実銃シューティングマッチ参戦で学んだことは、今回ですべて書き切りました ( ´ー`)フゥー...
まあ自分の実銃体験や成績なんて、さほど語ることもない話ですが、せっかくなので、あと数回は、残りの7ステージのこと、試合後のことも書いて蛇足としたいと思います ノシ
…もうちょっとだけ続くんじゃw