調整内容レポート その5(Snow Wolf バレット M107A1:前編)
今回のGnnsmithバトン基本調整内容レポートは、先ごろ入荷しましたSnow Wolf バレット M107A1についての内容をお届けします。50口径のアンチマテリアルライフルを再現したド迫力の電動ガン。その中身がどのようになっているのか、それをどのように調整しているのかを、じっくりご紹介いたします。
全長が1500mm近くあるので、床に置いて椅子に乗らなければ全体像が写せないバレット M107A1。今回は調整の前に、箱出し状態の性能を確認してみました。
まずは初速を計ってみたところ、83m/s前後の数値が出ていました。極端に低い初速ではありませんが、サバゲーに使うにはちょっと力不足なイメージですよね。では、弾道はどのようになっているのでしょうか。トリガートーク様の40mインドアシューティングレンジにてチェックです。
弾道がほとんど見えない動画で大変申し訳ないのですが、担当チューナーと私のリアクションから、その雰囲気がおわかりいただけるでしょうか。ノンホップ状態での射撃で、右にスライスしながら15m付近で急激にドロップする、それは酷い弾道で、フルオートに至ってはもはや散弾銃といった趣… BB弾がバラバラに散らばって飛んで行く様には、これが中華クオリティかと改めて驚かされました。ギヤノイズもなかなかに大きく、未調整のまま使うには無理があることがはっきりした形ですね。
箱出しでは使いものにならないことがわかったところで、分解に着手です。まずは銃本体右側、ストック側末端付近にあるリング付きのピンを引き抜きます。かなりキツ目にハマっているので、少しずつ回しながら慎重に抜き取りました。
上記のピンを抜くことで、アッパーレシーバーとロアーレシーバーの結合が解けるのですが、まずは必ずアッパーレシーバーを銃口側にスライドさせます。
5cm程度前進させたところで、アッパーレシーバーを上方向に引き抜くことで、レシーバーの分解は完了ですが、この際、重要な注意点があります。
画像中、黄色い円で囲った、メカボックス先端のノズルですが、通常はこのノズルがチャンバーの中に刺さった状態になっています。このため、上述のピンを抜いた際、アッパーレシーバーをいきなり上方に引き抜くと、ノズルが折れてしまうのです。ピンを抜いた後で、アッパーレシーバーを前方にスライドさせてから分解するのは、これを避けるために必要な手順なのですね。
巨大なレシーバーの中に収まっていたのは、意外にもごく普通のVer.2タイプのメカボックスでした。内部調整のため、このメカボックスを取り出して行きます。
ロアーレシーバー右側面、トリガー上あたりに見えるピンに付いたEリングを、専用のプライヤー等で取り外します。
こちらが取り外したEリングです。アルファベットのEに似た形ですよね。このEリング、精密ドライバーの先端でひっかけて外すといったことも出来るのですが、勢い良く飛ばしてしまう可能性が非常に高いので、注意が必要なところです。
次に、メカボックス後端を止めているプラスネジを外します。M4タイプで言えば、バッファーチューブ内の奥にあるネジということになりますね。
グリップとモーターを取り外した後、Eリングを外したピンを引き抜けば、メカボックスの取り出しが可能となります。レシーバーの分解の簡単さといい、実にシンプルな構造の電動ガンですよね。
取り出したメカボックスをとりあえず開き、内部の状態をひととおり確認します。
メカボックス内側は、例の得体のしれないグリスの使用もなく、比較的きれいな状態でしたが、全体にオイルが多く、ちょっとベタつく感じでした。無論、すべて洗浄するので、大した問題ではありませんけどね。
はい、ご覧の通り、強力パーツクリーナーでキレイに洗浄しました。メカボ内部の仕上げが荒いように見えますが、作動に影響しそうなバリ等はしっかり処理されていました。
メカボックスから取り出したギヤ類も、いつものように付着している油分を洗浄します。この際、ギヤの歯の欠けやゆがみの有無を目視確認しながら洗浄しています。
ギヤに吹きつけた強力パーツクリーナーを透明樹脂のコップに溜めてみたところ、ご覧のように緑がかった廃液が出来上がりました。何かの粉末が底に沈んでいますが、担当チューナーによれば、「まだ綺麗な方」とのことでした。
こちら、洗浄が完了したギヤ類です。歯の欠損等いった問題は無かったので、これらのギヤを使ったシム調整に取り掛かります。
ちなみに、ベベルギヤの裏を見るとJGの刻印が。つまりこのSnow Wolf製バレットに使われているギヤ類は、弊社でも取扱実績のあるJing Gong社の製品ということなのですね。両者がどういう関係にあるのかは不明ですが、中華エアガンにおいて、こういったケースは良くあることなのです。
ただ、メカボックスの側面にはSWというモールドがあるため、ここはSnow Wolfで作られているようですね。調整内容には関係ないことですが、分解しなければ見ることの出来ない部分なので、参考までに紹介させていただきました。
シム調整にとりかかる前に、モーターに取り付けられたピニオンギヤがしっかり固定されているかを確認し、やはり強力パーツクリーナーで洗浄しています。このバレットのモーターは、最初からDタイプのピニオンギヤが採用されていたので、このまま活かす方向でチューニングを進めます。
とはいえ、ベベルギヤとの噛み合わせの角度が狂っていては話になりませんので、メカボックスに組み込む前に、画像のように目視確認しています。
グリップをメカボックスに取り付けた状態でも、ピニオンとベベルの噛み合わせを目視確認し、問題の無いことがわかったところで、シム調整に入ります。
メカボックスを一旦閉じて、ベベルギヤのバックラッシュを確認しますが、ここでなかなかセッティングが決まらず、担当チューナーが意外な苦戦を強いられました。
上記の苦戦とは関係ないのですが、このメカボックスにもともと入っていたシムは、ご覧のように中央に向かって膨らむ形に歪んでおり、使い物になりませんでした。仮にとりあえず動いたとしても、こんなシムを使っていたのでは、遠からずギヤが壊れてしまうでしょう。
度重なる調整と確認の結果、このベベルではダメという結論に達し、APS製のベベルギヤと交換することになりました。画像右がもともと入っていたJG製ですが、左のAPS製ギヤと比べると、ピニオンと噛み合う部分の厚みが違うことがおわかりいただけると思います。要は、この部分が厚過ぎて、最適な位置が出せなかったのですね。
ベベルギヤを交換したことで適正なシム調整が完了。各ギヤにグリスを塗布して、メカボックスに組み付けます。
ギヤとシムとの間にもグリスを塗布しますが、ここはメカボックスを閉めた時に圧迫され、塗ったグリスが周囲にはみ出してしまうので、薄くなすりつける程度で充分とのことです。
グリスアップを終えたギヤまわりを組み付けたところで、スイッチ部分に接点グリスを塗布します。スイッチの寿命を少しでも延ばすために、これは必須の作業ですね。
と、ようやくシム調整が完了したところですが、ちょっと長くなりましたので一旦終了とさせていただきます。
次回、ピストンまわりの組付けと、バレル、チャンバーまわりの加工~完成までをレポートしますので、今しばらくお待ちくださいませ。
全長が1500mm近くあるので、床に置いて椅子に乗らなければ全体像が写せないバレット M107A1。今回は調整の前に、箱出し状態の性能を確認してみました。
まずは初速を計ってみたところ、83m/s前後の数値が出ていました。極端に低い初速ではありませんが、サバゲーに使うにはちょっと力不足なイメージですよね。では、弾道はどのようになっているのでしょうか。トリガートーク様の40mインドアシューティングレンジにてチェックです。
弾道がほとんど見えない動画で大変申し訳ないのですが、担当チューナーと私のリアクションから、その雰囲気がおわかりいただけるでしょうか。ノンホップ状態での射撃で、右にスライスしながら15m付近で急激にドロップする、それは酷い弾道で、フルオートに至ってはもはや散弾銃といった趣… BB弾がバラバラに散らばって飛んで行く様には、これが中華クオリティかと改めて驚かされました。ギヤノイズもなかなかに大きく、未調整のまま使うには無理があることがはっきりした形ですね。
箱出しでは使いものにならないことがわかったところで、分解に着手です。まずは銃本体右側、ストック側末端付近にあるリング付きのピンを引き抜きます。かなりキツ目にハマっているので、少しずつ回しながら慎重に抜き取りました。
上記のピンを抜くことで、アッパーレシーバーとロアーレシーバーの結合が解けるのですが、まずは必ずアッパーレシーバーを銃口側にスライドさせます。
5cm程度前進させたところで、アッパーレシーバーを上方向に引き抜くことで、レシーバーの分解は完了ですが、この際、重要な注意点があります。
画像中、黄色い円で囲った、メカボックス先端のノズルですが、通常はこのノズルがチャンバーの中に刺さった状態になっています。このため、上述のピンを抜いた際、アッパーレシーバーをいきなり上方に引き抜くと、ノズルが折れてしまうのです。ピンを抜いた後で、アッパーレシーバーを前方にスライドさせてから分解するのは、これを避けるために必要な手順なのですね。
巨大なレシーバーの中に収まっていたのは、意外にもごく普通のVer.2タイプのメカボックスでした。内部調整のため、このメカボックスを取り出して行きます。
ロアーレシーバー右側面、トリガー上あたりに見えるピンに付いたEリングを、専用のプライヤー等で取り外します。
こちらが取り外したEリングです。アルファベットのEに似た形ですよね。このEリング、精密ドライバーの先端でひっかけて外すといったことも出来るのですが、勢い良く飛ばしてしまう可能性が非常に高いので、注意が必要なところです。
次に、メカボックス後端を止めているプラスネジを外します。M4タイプで言えば、バッファーチューブ内の奥にあるネジということになりますね。
グリップとモーターを取り外した後、Eリングを外したピンを引き抜けば、メカボックスの取り出しが可能となります。レシーバーの分解の簡単さといい、実にシンプルな構造の電動ガンですよね。
取り出したメカボックスをとりあえず開き、内部の状態をひととおり確認します。
メカボックス内側は、例の得体のしれないグリスの使用もなく、比較的きれいな状態でしたが、全体にオイルが多く、ちょっとベタつく感じでした。無論、すべて洗浄するので、大した問題ではありませんけどね。
はい、ご覧の通り、強力パーツクリーナーでキレイに洗浄しました。メカボ内部の仕上げが荒いように見えますが、作動に影響しそうなバリ等はしっかり処理されていました。
メカボックスから取り出したギヤ類も、いつものように付着している油分を洗浄します。この際、ギヤの歯の欠けやゆがみの有無を目視確認しながら洗浄しています。
ギヤに吹きつけた強力パーツクリーナーを透明樹脂のコップに溜めてみたところ、ご覧のように緑がかった廃液が出来上がりました。何かの粉末が底に沈んでいますが、担当チューナーによれば、「まだ綺麗な方」とのことでした。
こちら、洗浄が完了したギヤ類です。歯の欠損等いった問題は無かったので、これらのギヤを使ったシム調整に取り掛かります。
ちなみに、ベベルギヤの裏を見るとJGの刻印が。つまりこのSnow Wolf製バレットに使われているギヤ類は、弊社でも取扱実績のあるJing Gong社の製品ということなのですね。両者がどういう関係にあるのかは不明ですが、中華エアガンにおいて、こういったケースは良くあることなのです。
ただ、メカボックスの側面にはSWというモールドがあるため、ここはSnow Wolfで作られているようですね。調整内容には関係ないことですが、分解しなければ見ることの出来ない部分なので、参考までに紹介させていただきました。
シム調整にとりかかる前に、モーターに取り付けられたピニオンギヤがしっかり固定されているかを確認し、やはり強力パーツクリーナーで洗浄しています。このバレットのモーターは、最初からDタイプのピニオンギヤが採用されていたので、このまま活かす方向でチューニングを進めます。
とはいえ、ベベルギヤとの噛み合わせの角度が狂っていては話になりませんので、メカボックスに組み込む前に、画像のように目視確認しています。
グリップをメカボックスに取り付けた状態でも、ピニオンとベベルの噛み合わせを目視確認し、問題の無いことがわかったところで、シム調整に入ります。
メカボックスを一旦閉じて、ベベルギヤのバックラッシュを確認しますが、ここでなかなかセッティングが決まらず、担当チューナーが意外な苦戦を強いられました。
上記の苦戦とは関係ないのですが、このメカボックスにもともと入っていたシムは、ご覧のように中央に向かって膨らむ形に歪んでおり、使い物になりませんでした。仮にとりあえず動いたとしても、こんなシムを使っていたのでは、遠からずギヤが壊れてしまうでしょう。
度重なる調整と確認の結果、このベベルではダメという結論に達し、APS製のベベルギヤと交換することになりました。画像右がもともと入っていたJG製ですが、左のAPS製ギヤと比べると、ピニオンと噛み合う部分の厚みが違うことがおわかりいただけると思います。要は、この部分が厚過ぎて、最適な位置が出せなかったのですね。
ベベルギヤを交換したことで適正なシム調整が完了。各ギヤにグリスを塗布して、メカボックスに組み付けます。
ギヤとシムとの間にもグリスを塗布しますが、ここはメカボックスを閉めた時に圧迫され、塗ったグリスが周囲にはみ出してしまうので、薄くなすりつける程度で充分とのことです。
グリスアップを終えたギヤまわりを組み付けたところで、スイッチ部分に接点グリスを塗布します。スイッチの寿命を少しでも延ばすために、これは必須の作業ですね。
と、ようやくシム調整が完了したところですが、ちょっと長くなりましたので一旦終了とさせていただきます。
次回、ピストンまわりの組付けと、バレル、チャンバーまわりの加工~完成までをレポートしますので、今しばらくお待ちくださいませ。